大阪府が誘致しようとしているIR(カジノを含む統合型リゾート)を巡り、吉村洋文・府知事に対しカジノの賛否を問う住民投票を実施するよう求める直接請求署名運動が、4月25日で62日間の署名収集期間を折り返した。活動主体の市民団体「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」の集計では、署名運動への参加者は6000人を超え、ゴールデンウイーク中は、各地のイベントなどに繰り出して署名を呼び掛けた。

署名集め人「受任者」6000人突破

 地方自治法12条の規定に基づく大阪の「直接請求署名運動」は、3月25日から5月25日までの62日間で大阪府内有権者の50分の1(約15万人)の署名を集めなくてはならない。署名運動の結果には法的強制力があり、50分の1以上の署名が集まれば、吉村知事は住民投票実施の条例案を府議会に提出しなくてはならない。

 署名を集めることができるのは、吉村知事から証明書を交付された「請求代表者」と、請求代表者から署名収集を委任された「受任者」に限られる。大阪府の直接請求署名運動は請求代表者50人でスタートした。運動期間に入ると、請求代表者は増やせないが、受任者になるのは署名簿の受任者欄に名前、住所などを書き込むだけなので、いくらでも増やせる。つまりは、署名収集に動く「受任者」をどれだけ確保できるかが、法定必要署名数を集められるかどうかの大きなポイントだ。

 5月1日時点で「もとめる会」の事務局が把握している受任者は6012人。事務局に届け出せずに活動している受任者もいるので、実際にはもっと多いとみられ、署名運動期間内に目標の1万人は手が届くところまで来た。

 問題は肝心の署名数だ。5月1日までに事務局が把握できているのは約3万8000筆で、目標の20万筆、法定必要数の15万筆には程遠い。これは署名集めに苦戦していると言うよりは、どれだけ集まっているのか正確に集約できないのが原因だ。

 直接請求署名運動は選挙管理員会の所管エリア単位で署名収集する決まりで、大阪府内には43市町村ある。うち、政令指定都市の大阪市と堺市はそれぞれ24行政区、7行政区に分かれているので、計72の選管エリアがある。日々の署名数をカウントして事務局に報告するエリアもある一方、まとめ役がおらず受任者が個々に動いているところは状況がつかみにくい。

請求代表者も街頭署名に奔走

 請求代表者は計72のエリアすべての有権者から署名を集めることができるが、受任者は自身が居住する市町村及び行政区の有権者からしか署名を集めることができない。署名簿は「請求代表者用」と「受任者用」があり、イベントや繁華街には様々な居住地の人が集まるため、このような場所で署名集めをする際には地元の受任者だけでなく、請求代表者の参加が必須となる。

 実務的に非常に面倒なのは、請求代表者用の署名簿であっても、1冊の署名簿(10筆分)に府内各地の有権者の署名が混在してはいけないことだ。つまり、請求代表者の署名簿も72種類が必要なのである。「もとめる会」の共同代表の1人であり、請求代表者でもある作家の大垣さなゑさんは、5月1日に大阪市北区で開かれたメーデーの会場で署名集めをしたが、参加者の居住地はてんでバラバラ。署名簿の束を抱えて会場を歩き回ることになった。「法律上、請求代表者は1人でも構わないので、当初は数人で十分だと考えていた。準備期間中に詳しいルールが分かってきて、急きょ50人に増やしたが、やり出してみるとそれでも足りないぐらい」と話す。

必要署名数を突破した自治体も

通勤客が行き交う場所で行われた街頭署名活動=5月1日、大阪市都島区で。「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」の城東区連絡会提供
通勤客が行き交う場所で行われた街頭署名活動=5月1日、大阪市都島区で。「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」の城東区連絡会提供

 

 5月2日夜、請求代表者、受任者の中心メンバーの会合があり、各地の取り組み状況が報告された。既に有権者の50分の1の署名獲得が判明しているのは、大阪市城東区、寝屋川市、大東市、千早赤坂村。有権者約4500人の千早赤坂村は、村内11の地域にそれぞれ受任者を置き、各自が地元をこまめに回るやり方で、5月1日時点で計130人の署名を得た。寝屋川市と大東市は同じ北河内地域の四條畷市と3市で受任者が連携し、街頭署名や署名ステーション開設を実施。生活圏が市をまたいでいる住民らをうまく包含して署名数を伸ばした。

 「もとめる会」の山川義保・事務局長は、「受任者同士が連絡を取り合い、孤立した受任者がいないようにするのがこれから重要になる」と話す。「有権者の50分の1」という数字は、請求代表者と受任者が自分の個人的つながりで集められる範囲を超えており、後半戦は街頭署名、戸別訪問など“足で稼ぐ”活動の広がりが不可欠となりそうだ。(by幸田泉)